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コラム

おじさん構文だっていいじゃないか

残念な文体

おじさん構文。みなさん、知ってますか。
おじさん構文とは、オトナ世代の中でも中高年が、LINEなどのSNSで見られるおじさん特有の言い回し(メッセージ)のことです。

たとえば、LINEの書き出しに「ヤッホー!」という挨拶を使ってみたり、「汗をかいた絵文字」「!や⁉などの絵文字」をやたら多用したり、「〜だネ」「○○チャン」などのカタカナ言葉が特徴。

きっかけは、 “おじさんがLINEで使っていそう”、あるいは“うちの上司がいつも使っている”と、若い女性たちが面白がって揶揄するようになったことでした。送られたほうの若者たちから、「ウザッ」とか「キモッ」と思われてしまう「残念な文体」として、最近話題になっています。

ガラケー時代の名残り

お疲れさま!!! 毎日暑くて集中力が続かないネ(汗)あ、トシのせいか(汗)
ところで、資料作成進んでいるかな?
プレゼン本番の前に確認したいので、今週末までには送ってください(ペコリ(汗)
落ち着いたら、部のみんなで飲みに行きたいネ(ビール)

こんな感じの文体が、若者からはおじさん構文と認定されます。

おじさんが若者だった頃は、PHSやガラケーが全盛でした。それまで文字だけだったメールに絵文字を入れられるのは画期的で、当時はめちゃめちゃイケていたのです。
つまり、おじさんは若い時のガラケーのように、“メッセージが楽しい感じになるように”という配慮から、絵文字や顔文字をやたら使ってしまうというわけです。
構造としては、LINEでスタンプを多用するのと何ら変わらない行為なんです。
しかし、現在の若者がここまで絵文字を多用することはなく、特に、「汗」とかの絵文字なんかは“おじさんっぽさ全開のアイテム”となっているのです。

“メッセージがやたら長い”というのもおじさん構文の特徴。

これも昔のガラケーのメールの影響といえるでしょう。おじさんは、ひとつの文章でまとめて言いたいことを長々と書いてしまう。長文を読みやすくするための工夫が、句読点の多用やカタカナ言葉の多用です。これが若者からすると違和感の素。今の若者にとってメッセージを送りあうのはチャットがデフォルト。短い文章を細切れに送ることが圧倒的に多く、結果的にメッセージに句読点を使うことも少ないのです。

テレワークでおじさん構文が加速

今は、テレワークが広がったことで、社内コミュニケーションが対面や電話からテキストメッセージでのやりとりに移り変わっています。しかもビジネスチャットを使う職場も増えました。こうした中で、よかれと思っておじさん構文化してしまうケースも増えています。

若手社員にとって、目上で年上であることから、彼らに威圧感を感じさせないように気にかけているオトナ世代は少なくありません。ただでさえテキストコミュニケーションは無機質で冷たい印象があります。若手とフレンドリーに接したいという配慮から、砕けた表現を意識した結果、その工夫が絵文字の多用につながっていく……。

しかし、若者に近づこう、怖がられないようにしよう、という気遣いは完全に上滑っています。気を遣って寄せようとしたメッセージが、寄せようという意識だけ伝わり、肝心の文体は、まったく寄っていないわけです。逆に「なれなれしい」とか「媚びている」と仇になる。非常に残念です。

大阪の人が、東京の人が話す似非関西弁にアレルギーを示す。若者にとって、おじさん構文はこんなニュアンスなのかもしれません。

怖いキャラよりいじられキャラで

かくゆう自分も、立派なおじさんです。おじさん構文なるものを知り、自分もめちゃくちゃおじさん構文になってるじゃん!と知った時は、まぁまぁショックでした。
どうやったら、おじさん構文から脱却できるか。すごく意識してメッセージを書くようになった時期もあります。
そもそもSNSネイティブではないんだし(下手に関西弁に手を出さないほうが賢明という東京人と同じ感覚というか)、砕けた表現を使わないという手もある。そんなふうにも考えました。

しかし、たどり着いた結論は、おじさん構文と思われようが気にしないこと、でした。
現に最近では、一部で「かわいい」「ウケる」と人気になり、若い女性でもメッセージがおじさん構文化している人がいるとのこと。自分のメッセージを、あえておじさん構文に変換してくれるアプリまであるそうです。

ただでさえ、職場の心理的安全性が重要だとされる昨今。
心理的安全性を高めるひとつのポイントは、お互いに胸襟を開く自己開示が有効とされます。ビジネスの鎧で武装したおじさんの硬いメッセージより、鎧を脱いだ柔らかいメッセージのほうがよくないですか。怖がられるキャラよりは、いじられキャラで。そう開き直るほうが、組織開発の観点からもアリのように思います。おじさん構文だっていいじゃないですか。