人の話を真面目に聞け
皆さんは、会議中に自分の話を聞きながらスマホをいじり始めた若者を見たら、どう思うでしょうか。9割方予想される反応は「人の話を真面目に聞け!」じゃないですか。
今どきの若者がスマホ中毒なのは知ってるが、それとこれとは違う。ほんと、ビジネスマナーがなってないよな…。かくいう私も、こんな感じでした。
しかし、こういう経験があり、少し考えが変わりました。
社内で若い社員と会議をしていたときのことです。ある飲食チェーンについて多角的に分析しながら議論をしていたのですが、メンバーの一人がいきなりスマホをいじり始めたのです。当然、イラっとしました。
しかし、その矢先に「あ、全部で152店舗です。ちなみに首都圏では55店舗です」と発言しました。彼は、この企業の情報を検索していたわけです。
若者の検索スピードはすごい。
「お、おう。ありがとう」。筆者は、こう返すのがいっぱいいっぱいでした。
知らない用語を調べて何が悪い?
若者の言い分はこうです。
真面目に聞いてるからこそ、スマホ使ってるんですけどね。知らない用語が出てきたら、その意味をすぐに調べたほうが会議についていきやすいし。この前だって、出てきたデータの信ぴょう性がビミョーだったんで、ググったら怒られたけど…。そっちのほうが正しい議論になると思うんだけどなぁ。
Z世代の若者は、情報を自分の頭にインプットして留めておくよりも、その場で適宜検索したほうが、よほど無駄がないと考えています。
インターネットやSNSには、さまざまな情報が存在します。そこには仕事の解もたくさんあると、彼らは信じています。自らが難しいことに挑んで無駄に時間をかけるより、SNS上の友達から答えを聞けばいい。そのほうが仕事も捗るとナチュラルに考えているのが若者です。
だから、彼らはいつもスマホを片手に仕事をしています。逆に、その場ですぐに使える便利ツールを「文鎮」のように置いておくオトナに「なんで?」と思っているくらいじゃないですか。
マルチタスキングがカッコいい
確かに、相手の目を見ることで「真剣なふりをする」ことだってできます。真剣に相手の目を見ながら「お腹が空いたなあ・・・」とお昼ごはんのことを考えている人と、目をそらしてスマホをいじりながらでも、相手の話の裏付けをとって反応しようとしている人、どちらが話している側にとって「真剣な」態度であることは明白でしょう。
しかし、ここまでは理解できても、オトナからするともっと過激な価値観を持った若者もいます。時間を有効活用するためには、同時に別の作業をすることが効率がいいという考えです。
会議だって、ずっとそれだけに集中していなければならないなんてことはまずない。もしそこで、じっと座ったまま、おっさんたちのくだらない話を聞いていれば、自分の時間の充実度はかなり下がってしまう。
こうした考えがベースにあると、会議の途中にも、(必ず発生している)目に見えないすきま時間に、(無理のない範囲内で)別のことをやればいい、となってしまいます。
マルチタスキングというとカッコいいけど、これを許容するかどうかは意見の分かれるところじゃないですか。
オトナと若者の折衷案とは
我々、オトナ世代にとって、他人の話を聞く時、相手の目を見て真剣に聞くことは、常識中の常識。会議中に人の話を聞いてないのは「けしからん」となります。
しかし、議論をスピーディに進めようと必要な情報を入手するためにスマホをいじっているとしたら…。目を見て真剣にではないものの、彼らなりに会議に真剣にコミットしているわけです。これはこれで一理あります。
私なりに考えた折衷案は、会議中のスマホ使用に関するルール化です。あまりに厳格なルール運用は若者に嫌がられるでしょうが、「会議の要件に関連する検索ならOK」「スマホを使う時にはひと声かける」くらいのことを決めるだけで、こちらのイライラは随分と軽減できると思います。生産性重視の若者とも折り合いつつ、なおかつ仕事のスピードアップが図れる。いかがですか。
意外とこうしたプチルールが、おっさんと若者に分断を乗り越えていくのに有用なんじゃないか、と思う今日この頃です。