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コラム

いま出社に戻して、本当にいいんですか?

コロナ5類移行でオフィス回帰

 ご存じのように、新型コロナウイルス感染症は5月8日をもって5類に移行しました。これによりオフィス回帰を志向する企業が続々とあらわれ、結果的にリモートを続ける企業と原則出社に戻す企業の二極化が進んでいます。

 コロナ禍を契機にリモートワークやフレックスタイム制が広がり、時間と場所に縛られない自由度の高い働き方が浸透したかのようにみえましたが、揺り戻しの力学が働いているーー。そもそもなぜ、企業は出社に戻したいんでしょうか。

 そのひとつが上司・同僚・部門間のコミュニケーションの減少です。
某通信系企業が実施した調査によると、「上司とのコミュニケーションがリモートワーク前と比べて弱まった」と回答した割合が2割、同じく「同僚とのコミュニケーションが弱まった」が3割に及び、やはりコミュニケーションの減少がみられます。

一方で、リモート派の企業は、こうしたコミュニケーション不足をあの手この手で補っています。最大の解決策は、原則リモートとしながらも、コミュニケーション不足解消のために週1~2日の出社を推奨するといったハイブリッド勤務体制でしょう。フル出社、フルリモートという二者択一ではなく、柔軟な勤務運営によってリモートワークの弱点をリカバリーする作戦です。

採用に与える効果は絶大

 こっち派の企業がリモートワークにこだわるのは、もちろんデメリット以上にメリットが大きいと考えているからに他なりません。それは、下記の3点に集約できると思います。

1⃣デジタル機器の活用によるDXの加速と推進
2⃣オフィス賃料やペーパーレス等によるコスト削減
3⃣人材の定着と優秀人材の採用

 特に採用の観点では効果絶大でしょう。エン・ジャパンの調査では「今後の希望する働き方」を聞いたところ、最も多かったのは「出社と在宅を組み合わせたい」というハイブリッド勤務が65%、「完全な在宅・テレワークを希望している」が20%、「在宅・テレワークは希望していない」は16%で少数派にとどまります。
他の調査でも、転職志望者が特に重視するものとして「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」を挙げている人が51%と最も多く、若い世代の20代では56%、30代では59%を占めます。

 これは当然かもしれません。コロナ禍で時間と場所に縛られない自由度の高い働き方が浸透し、それを享受している人もいれば、個人の生産性向上につながることを自覚している人もいます。そういう人にとってはフル出社の企業は避けたいと思っても不思議ではないし、原則出社の企業は人材獲得では不利に働くでしょう。

 また、フルリモートであれば地方の優秀な人材も採用できます。
例えば、都市部で事務系ホワイトカラーの仕事をしていた女性が、配偶者の転勤などの事情で退職し地方に移住するケースも少なくありません。「地方では前職と同じような仕事はなかなか見つからなくて……。そんな中で、フルリモートで同じような仕事ができる募集を見つけて。むしろ大歓迎でした」といった声も聞きます。

人的資本経営の時代

 「社員にはまったく出社しなくてもよいと言っているが、もしかしたら失敗するかもしれない。一方でデジタル化の促進の流れや働き方の進化を考えると、逆に出社させている会社が失敗なのかもしれない。今の段階では何とも言えないが、会社としては明日の日本の働き方だと信じてチャレンジするしかない」と、ある企業のトップは語ります。

 採用に関するインパクトという直接的メリットに比べて、もっとレイヤーの高い視点になりますが、これは、人的資本経営の文脈でも語られている大きなテーマです。
社員のエンゲージメントの向上や多様な人材を引きつけることで、イノベーションを起こしながら高い生産性を生み出していく。彼がいうところの「明日の日本の働き方」とは、そうした世界観なのでしょう。

 人材育成の観点、あるいは偶発的なコミュニケーションから生まれるアイデアなど、確かに対面で働くことならではのメリットは多々あります。しかし、だからこそ対面の良さも取り入れながら新しい働き方を模索していくことこそが、極めて重要だと思うのです。
そう考えると、リモートワークに端を発する柔軟な働き方の萌芽は、コロナがくれた数少ないギフトなのかもしれません。 いま、経営者の皆さまに問いたい。出社に戻して、本当にいいんですか。